中高老年期運動指導士ってどんな資格?健康運動指導士との違いは?
長寿大国となった日本では、健康で自立しながら長生きしたいという希望を持った人が増えています。自己流でウォーキングやランニングなど行って、かえって膝を痛めたり心臓に負担をかけたりすることも。その人に合った運動がどのようなものか正しく知るために、中高老年期運動指導士の資格はおすすめです。
健康運動指導士は難易度が高くあきらめていた人でも、中高老年運動指導士であれば取得できます。自分の健康、体力維持のため、そしてニーズが高い介護やリハビリの現場で活躍するために、どのような資格なのか紹介します。
中高老年期運動指導士とは?
中高老年期運動指導士とは具体的にどのような資格なのでしょうか?健康運動指導士との違いも併せて見ていきましょう。
長寿大国ニッポンの将来を支える
中高老年期運動指導士は、公益法人日本スポーツクラブ協会が主催する民間の資格です。
今や世界に誇る長寿大国となった我が国。平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳(参考:厚生労働省「平成30年簡易生命表」)となり、100年前と比べると40年近くも長生きするようになりました。
ところが、平均寿命は長くなっても健康で日常生活を送れる「健康寿命」はもっと低いのです。厚生労働省の調査によると、日本の「健康寿命」は男性72.14歳、女性74.79歳となっています。
つまり、日常生活に何らかの支障をきたしてから亡くなるまで、男性で8.84年、女性で12.35年もあることになります。決して短くない期間を自立して生活できるよう、国の政策としても健康寿命を延ばそうと取り組んでいます。
そこでニーズが高まっているのが中高老年期運動指導士。中高年以降の健康と体力づくりを、専門的な知識とスキルで指導します。人生100年時代の日本を支える、将来性の高い資格です。
介護の世界でも需要が高い
介護の現場でも、運動を取り入れたプログラムが必要とされています。しかしながら、運動指導できる人は少なくニーズが高まっているのです。
介護士の間でも、中高老年期運動指導士の資格を取る人が増えており、この資格を持っていることでさまざまなアプローチができるようになります。人材不足の介護現場ではありますが、中高老年期運動指導士であればさまざまな場所で指導にあたることができるでしょう。
また、健康維持のため、病気予防のために中高年がスポーツジムやスポーツクラブで運動することが増えています。ここでも中高老年期運動指導士は、中高年向けの最適な運動プログラムを提案し、指導するという活躍が期待されています。
健康運動指導士より簡単に取得できる
フィットネスクラブや病院などで活躍している健康運動指導士。運動の指導をするという点では中高老年期運動指導士と似ているのですが、高度な専門知識が必要となるため難易度が高い資格です。
「公益財団法人健康・体力づくり事業財団」が認定する民間の資格ではありますが、資格取得のための講習を受講するのに条件があります。それは、4年生体育系大学卒業、医療系・栄養系の資格保有者(看護師、薬剤師、歯科医師、理学療法士など)というハードルの高いもの。条件が伴わない場合は、「健康運動指導士養成校」で受験資格を取得しなければなりません。
資格を取りたいと思っても、かなり厳しい健康運動指導士ですが、中高老年期運動指導士は、満18歳以上であれば誰でも受講できます。運動で人をサポートする仕事がしたいけれど、今から健康運動指導士は難しいという方でも大丈夫ですよ!
中高老年期運動指導士はどんな人におすすめの資格?
中高老年期運動指導士はどのような人に向いている資格なのでしょうか?取得するとさらに活躍できる人を紹介します。
中高年向けのフィットネス指導
中高年には中高年のフィットネスが必要です。ダイエットや筋力アップというより、健康的な生活習慣や食習慣、無理のない範囲での筋力維持トレーニングを指導することができます。
これまでフィットネスクラブやスポーツジムでのインストラクター経験がなくても、中高老年期運動指導士の資格は活かせます。ジムなどのインストラクターというと、スポーツ万能でないとなれないイメージですが、中高老年期運動指導士は標準の運動機能があれば取得できます。
運動に携わる仕事がしたいけれど、インストラクターはハードルが高いという方にはおすすめです。
介護士
介護施設や訪問介護の現場で働く介護士は、生活面での介護はできても運動面で指導をすることができません。さらに踏み込んだ介護をするためにも、中高老年期運動指導士の資格はとても役に立ちます。
その人に合った運動プログラムを組み、指導することで少しずつ総合的に要介護者が回復していけば、やりがいも大きなものになるでしょう。
介護の現場でも要介護者の運動は必要とされていますが、運動を指導できる人がいないことがネックとなっていました。介護士が中高老年期運動指導士の資格を取ることで、介護をしながら運動の指導もできるようになります。
さらに上級資格を目指す
中高老年期運動指導士の資格を取得すると、さらに「介護予防運動スペシャリスト」や「健康運動実践指導者」といった養成講習会に参加ができるようになります。
「介護予防運動スペシャリスト」は、高齢者が要介護になることを予防するための資格です。自立に必要な身体機能の回復だけでなく、維持すること、さらに向上させることを目的としています。
「健康運動実践指導者」は「健康運動指導士」を認定している公益財団法人健康・体力づくり事業財団が主催しています。中高老年期だけでなく、あらゆる年代で運動不足によるメタボリック症候群や生活習慣病を予防するために、専門的知識から指導ができる資格です。
受講資格は「健康運動指導士」同様、体育系の大学、短大、専門学校卒業生などと条件が厳しいのですが、運動指導を3年以上行っている人にも受講資格があります。先に中高老年期運動指導士を取得し、3年以上実務経験を積むと受講資格ができますので、最初の条件をクリアできない人におすすめです。
自分や家族の健康維持、病気予防
中高老年期運動指導士の勉強は幅広く、生涯にわたって健康を維持するための運動、食生活、生活習慣などを正しく身につけることができます。自分や家族が健康で長生きできるよう、勉強のために資格取得を目指すこともおすすめします。
自己流の運動で、かえってケガや病気のリスクを高めてしまうこともあります。かといって、トレーナーのいるジムやフィットネスクラブに会員登録しても続かないという人もいるでしょう。
それだけ高い意識があるのなら、中高老年期運動指導士の資格取得を目指しましょう。正しい知識と実践方法が身に付き、自分や家族の健康維持に役立ちます。
中高老年期運動指導士 資格取得試験の概要
それでは気になる資格取得試験の具体的な内容を紹介します。限られた講習と人数で行われるので、日程や場所はしっかり確認しましょう。
資格取得概要
- 受講資格:満18歳以上、中高老年期の健康づくり指導を目指す方
- 資格取得方法:2日間にわたり講義、実践実技を受講し、規定のレポート提出
- 受講内容:①講義 ②実践実技 (※詳細後述)
- 受講地:東京、大阪
- 受講日程:東京 年2回程度、大阪 年1回
- 受講料:20,000円(税込)、資格取得にはレポート審査料2,000円、認定料2,000円、登録費(4年)12,000円が別途かかります。
- 問合せ:公益財団法人 日本スポーツクラブ協会
試験はなく、2日間受講後にレポートを提出することで資格取得できます。ただし、受講地が東京と大阪に限られており、年に1〜2回のみの実施となります。また、受講の際には、遅刻、早退、欠席に注意しましょう。合格とならない場合があります。
合格すると、初年度から4年は登録料20,000円ですが、その後は2年ごとの更新となります。更新を行わないと資格失効してしまいますので忘れずに更新しましょう。また、6年継続すると7年目から「生涯会員Master」という資格が取得できます。
中高老年期運動指導士の勉強方法
まずは遅刻・早退・欠席のないよう2日間の講義、実技を受講してください。資格取得には、受講後のレポート提出が必要なので受講の際にはノートやメモを取るようにしましょう。
きちんと受講し、レポート提出すればほぼ合格しますので難易度は高くありません。学ぶ意欲と健康への知識を役立てたいという気持ちが大切です。
中高老年期運動指導士ってどんなことを勉強するの?
合格率が高いとはいえ、どのような内容の勉強をするのか心配という方のために、講義の主な内容を紹介します。仕事に活かすだけでなく、自分自身や家族の健康維持にとても役立つ内容です。
1日目・講義
受講の1日目はすべて座学です。特に中高年からの健康維持について学んでいきます。
生涯・健康スポーツ論
高齢化社会が問題視される中、生涯を通して健康でいることはこれからの社会でとても重要になります。そのために運動がどのように関係しているか、健康を維持するための食生活はどのようなものかについて詳しい講義があります。
血糖値やコレステロール、体脂肪といった中高年の悩みでもある生活習慣病の原因についても学習します。中高老年にとって有酸素運動が適しており、どのような効果が期待できるか基礎知識が身に付きます。
高齢・老年期身体特性論
高齢になると老化によって身体の生理機能が低下します。肉体を構成している細胞自体も老化し、細胞の数が少なくなったり働きが悪くなったりして臓器の機能低下が起こります。高齢者は身体の水分量も減っており、脱水になりやすくもなります。
このような、高齢・老年期特有の身体的特徴を学ぶことで、予防やリスクの減少へと繋げていきます。
健康の維持と食生活習慣
健康と食事は切っても切れない関係です。人間の身体は食べたものから作られているので、日頃の食生活が中高年期以降の健康を左右すると言っても過言ではありません。
健康で長生きするにはどのような食生活がよいのかを学び、運動だけでは改善できない健康維持をサポートしていきます。
2日目・実践実技
受講2日目はすべて実践実技になります。主に加齢による運動機能の低下を予防するための実践講習です。前日の講義を頭にしっかり入れておくと、さらに理解が深まるでしょう。
運動実践実技
中高老年期に最適な運動は、有酸素運動です。特にウォーキングがすすめられますが、それはどうしてなのか実践しながら足腰の筋力を強化する方法を学習していきます。
長年デスクワークだった中高老年も増えており、足腰が弱く足の筋力が落ちている人が多く見られます。無理のない運動で筋肉を鍛え、歩く動作を安定させるような指導ができるようになります。
各種運動実施形態
人によって、体格も違えばそれまでの生活習慣も違います。今の身体の状態も違うので、中高老年期運動指導士は個人に合わせた運動をプログラムできるようになることが重要です。
そのために、各部位の鍛え方や、椅子や便座といった身近なものを使った運動まで、その人に必要な運動とそのための方法を学びます。
運動外傷・障害予防論および救急救護
運動の甲斐あって、体力や筋力が増してくると生じるのが「やり過ぎ」です。やり過ぎてしまうと事故やケガを引き起こすことも考えられるため、万が一のためにリスク回避の対処法を学びます。
打撲や骨折・脱臼というケガ、止血の仕方、三角巾の作り方、搬送の仕方、心肺停止になった場合の対処など、クライアントの命を守るため必要な知識です。もちろん、普段の生活でも大いに役立ちますので、いざという時慌てずに済むようしっかり実践しておきましょう。
中高老年期運動指導士は社会貢献できる資格
明治時代は平均寿命が50歳未満であったのに、現在は人生100年時代となりました。しかしながら、寿命が延びたことにより介護が必要な高齢者が増えたことも事実です。
高齢化社会問題を解決するために、国は「健康寿命」を延ばすという政策を打ち出しました。それには、中高老年期の正しい健康知識を持ち、適切な運動を指導できる人材が必要です。
介護やリハビリの現場でも中高老年期運動指導士のニーズは高まり、さらにはフィットネスクラブやスポーツジムでも中高年に向けた運動指導の必要性が高まっています。
中高老年期運動指導士は、健康で歳を重ねることを目的とした専門家であり、日本の未来を支える有望な資格です。もちろん自分や家族の健康にも役立てることができるので、興味があればぜひ取得しましょう!